単行本

ルビーの谷(ハリネズミの本箱)

ダラスとフロリダは、13才のふたごの男女。孤児院で育った捨て子だ。院では規則をかたっぱしから破って院長におしおきされ、里子に出されれば問題を起こして院に送りかえされてしまう。大人たちはふたりを「問題児」と呼ぶが、ふたりにしてみれば大人のほうが「問題大人」なのだ。こんなくらしはもううんざり。いつしかふたりは、町を通過する夜汽車にとびのり、遠くへにげることを夢みるようになっていた。
 そんなとき、モーリーという名のお年よりの夫婦が孤児院をおとずれる。夏のあいだべつべつに旅行するので、それぞれ子どもを同伴したいのだという。院長はやっかいばらいのため、ふたごに白羽の矢を立てた。こうしてふたごは、ルビーの谷という自然のままの美しい谷で、モーリー夫妻とくらすことになった。
 夫のティラーはこの夏、ボートで川くだりの旅をすることに決めていた。いっぽう、妻のセアリーは、離島でめずらしい鳥の観察をしたがっている。ティラーにはフロリダが、セアリーにはダラスが同行することになり、さっそく旅の準備がはじまった。すきを見てにげだすつもりだったふたごだが、家事や大工仕事を手伝えば「お手伝い料」がもらえると知るや、しばらくのこってお金をためることにする。
 とはいえ、皮肉屋で口のへらないフロリダと、空想にふけりがちなダラスは、あつかいやすい子どもとはいえない。ティラーとセアリーをとまどわせる言動もしばしばだ。ふたごのほうも、これまで孤児院の院長や里親たちからさんざんな目にあわされてきただけに、容易にティラーとセアリーを信用することができない。たいせつなカエデの木を切りたおしてしまったり、納屋の壁に穴をあけてしまったりと、へまをするたびにおしおきを覚悟するが、夫妻は意外にも平然としているのだった。
 ある日、旅行用品を買いに町へ行ったふたごは、院長にばったり出くわす。院長のイヤミにふたりはつい、「あの人たちはまぬけじゃない。たいせつなお金はまぬけな銀行なんかじゃなく、ルビーの谷の石の下にかくしてあるんだ」と口をすべらせてしまう。
 これを聞いた院長の胸に、ある欲望がめばえた。モーリー夫妻とふたごが旅行でるすにしているあいだに、そのお金をちょうだいしてしまおう。そのための下準備として、定職もなくぶらぶらしているチンピラふうの男Zに、ルビーの谷の偵察を命じる。ところがこのZ、たいへんな秘密を発見してしまい……
 いっぽうフロリダとダラスも、そろそろにげだす潮時と決心をかためる。そして旅行のために買ってもらった寝袋などを持ち、夜中に家をこっそりぬけだした。ずっと待ちつづけてきた夜汽車に、ようやく乗るのだ。だが、ふたりの心はなぜか晴れない。森のなかで道にまよい、一夜をすごしたふたりが目をさましたとき、そこには……

 美しい自然にかこまれ、のんびりと日々をすごしながら、ふたごと老夫婦が心を通いあわせていくようすがほほえましい。また、きょうだい、親子、夫婦などの関係がていねいにえがかれ、さまざまな立場の人の共感を呼ぶだろう。くすりと笑ったあとに、しみじみとした味わいののこる作品。
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商品情報

著者
シャロン・クリーチ
訳者
赤尾 秀子
刊行日
2004/07/08
種類
単行本
レーベル
ハリネズミの本箱
日本図書分類/Cコード
8097
判型
46判
ページ数
296
重量
414
商品コード
0000150024
ISBN
9784152500243

著者紹介

  • シャロン・クリーチ