単行本

秘密が見える目の少女(ハリネズミの本箱)

あたしはディナ、10才。白樺村のはずれに、母さん、兄さん、妹と4人で暮らしている。最近、あたしの周囲は大きく変わった。あたしに“恥あらわし”の能力があることが明らかになったからだ。恥あらわしとは、目を見るだけで、相手がひたかくしにしている秘密や過去におかした罪、やましく思っていることなどがすべて見えてしまい、そのうえ本人にもその罪深さを知らしめてしまうという、特殊な力だ。母さんから受けついだこの能力のせいで、あたしはみんなから避けられるようになってしまった。あたしはそれが、くやしくて腹が立ってたまらない。あたしはこんな目、ほしいなんて思ったことないのに。
 でも母さんは、恥あらわしの力は大切なものなのだとあたしに言い聞かせる。人殺しやぬすみの容疑者がつかまって、証拠もなく自供もしないときは、恥あらわしが必要になるのだ。容疑者の目を見て、ほんとうにその人が罪をはたらいたのかどうか、見きわめるために。そして、罪人が自らのおかしたことを心からくいるよう、みちびくために。それは恥あらわしにしかできないことだ。母さんはあたしに、弟子としての修行をはじめよう、と言ってくれた。
 ところがその夜、ひとりの男が家にやってきた。ドゥンアークのお城からの使いだというその男は、母さんに恥あらわしとして来てくれと頼む。母さんはいつものように出かけていったが、翌日になっても帰らない。心配しながら待つあたしたちのところに、べつの男がやってきた。そして、母さんがあたしを呼んでいるので、いっしょにドゥンアークへ来るように、と言う。あたしはその人とともに、母さんのもとへ向かった。
 だが、母さんはあたしを呼んでなどいなかった。あたしをむかえに来た男、大公の甥ドラカンの策略だったのだ。母さんが呼ばれたのは、老大公と、亡き長男の妻と、4才になるその息子が殺された事件のためだった。逮捕されたのは、大公の次男ニコデマス(ニコ)。兄嫁へのかなわぬ恋におぼれ、ゆるしてくれない父と、つれない兄嫁と、その幼子までをも殺したのだとされている。ニコ自身は酔っていてなにも覚えていない。母さんはその目を見たが、罪をおかした形跡はないと言いきったそうだ。だがドラカンはみとめようとしない。ニコが犯人だと信じこんでいて、何とか母さんにそう言わせようとしている。あたしを連れてきたのは、母さんをおどす道具にするためだったのだ。
 ニコの牢に入れられ、ひと晩をすごすことになったあたしは、すぐにニコの心根を見ぬく。ニコはやさしさと弱さを持った、17才のふつうの少年だ。おそろしい殺人をおかせるような人物ではないし、あたしが目を見てもそんなあとは見あたらない。真犯人は、大公の位をねらうドラカンなのだ。ニコをも抹殺する気だとさとり、あたしたちは牢をぬけだすが、そのとちゅう、あたしはドラカンが手なずけているドラゴンに腕をかまれてしまう。ニコとあたしは助けを求めてさまざまな知り合いのもとをおとずれるが、追っ手は行く先々にあらわれる。そしてついに、ドラカンによって魔女の烙印を押された母さんが処刑されると聞き、あたしたちは反撃に出ることに……

 息つくひまもなく次々とおそいかかる危機に、気丈に立ち向かっていく少女の姿が印象的。いやがっていた自らの力を受けいれ、武器としていく過程には、成長が感じられてたのもしい。単純な剣と魔法のファンタジイでないところが、逆に新鮮で魅力的だ。
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リーネ・コーバベル

商品情報

著者
リーネ・コーバベル
訳者
木村 由利子
刊行日
2003/02/14
種類
単行本
レーベル
ハリネズミの本箱
日本図書分類/Cコード
8097
判型
46判
ページ数
296
重量
420
商品コード
0000150007
ISBN
9784152500076

著者紹介

  • リーネ・コーバベル