第12回ハヤカワSFコンテスト 最終選考結果発表のお知らせ

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文学賞

8月30日(金)、第12回ハヤカワSFコンテストの最終選考会が、東浩紀氏、小川一水氏、神林長平氏、菅浩江氏、小社編集部長・塩澤の5名により行なわれ、協議の結果、カスガ氏の「コミケへの聖歌」、犬怪寅日子(いぬかい・とらひこ)氏の「羊式型人間模擬機」の2作が大賞に、カリベユウキ氏の「マイ・ゴーストリー・フレンド」が優秀賞に、それぞれ決定いたしました。大賞受賞の2作は2025年1月に単行本で刊行、優秀賞受賞作を2025年2月に刊行予定です。
詳しい選評は〈SFマガジン〉12月号(10月25日発売)に掲載いたします。

〈追記〉
今回は大賞受賞者が2名となるため、正賞の賞牌をそれぞれに、副賞は50万円ずつ贈呈します。

第12回ハヤカワSFコンテスト

大賞

カスガ
「コミケへの聖歌」


●あらすじ
二十一世紀半ばに文明は滅んだ。東京は赤い霧に包まれ、そこから戻って来た者はいない。山奥の僻村イリス沢に生き残った少数の人々は、原始的な農耕と苛酷な封建制の下で命を繋いでいる。そんな時代でも、少女たちは廃屋を改造した〈部室〉に集まり、タンポポの〈お茶〉を優雅に楽しみながら、友情に、部活に、マンガにと、青春を謳歌する。彼女ら《イリス漫画同好会》の次なる目標は〈コミケ〉、それは旧時代に東京の海辺に存在したマンガの楽園だ。文明の放課後を描く、ポストアポカリプス部活SF。
著者略歴 1974年生まれ。大阪府出身。
 

大賞

犬怪寅日子(いぬかい・とらひこ)
「羊式型人間模擬機」


●あらすじ
当主が死の間際に羊になる一族に仕える「わたくし」は、「御羊」と呼ばれるその肉体を解体し、血族に食べさせることを生業とするアンドロイドである。一族では御羊の肉を口にしてはじめて一人前の人間として認められるのだが、病弱だった前当主は早逝しており、その子供たちは未だ御羊を味わったことがない。ある朝、先代の父である大旦那が御羊になっているのを発見した「わたくし」は一族にそれを報せに走るが、彼らはそれぞれに複雑な思いを抱えていた。非生命体視点で人間の本質を描きだした、神林長平氏絶賛の幻想SF。
著者略歴:1986年生まれ。神奈川県小田原市出身。『ガールズ・アット・ジ・エッジ』(MeDu COMICS)原作担当。

優秀賞

カリベユウキ
「マイ・ゴーストリー・フレンド」


●あらすじ
売れない役者の町田佐枝子は、ホラー映画の脚本家・綿道の紹介で、ドキュメンタリー映画のレポーター役を務めることになる。それは、東京都内の団地で頻発する怪奇現象を調査するというものだった。学生アルバイトの真野とともにレポートを始めた佐枝子は、敷地内のファミレスからこちらを監視するウェイトレスの春日ミサキ、謎の外国人アラン・スミシーらに遭遇、やがて、老婆が斬首されたという噂の部屋で、夥しい蛇のウロコが貼りついた浴室を目にする。ギリシャ神話の世界が現実を侵食していくホラーSF大作。
著者略歴:1971年生まれ。大阪府出身。