幽霊船から来た少年
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1620年、デンマーク・コペンハーゲンの港を出航したフライング・ダッチマン号。大西洋をわたり、チリのヴァルパライソをめざしていたこの船は、ホーン岬付近で嵐に巻きこまれ、乗組員もろとも波間に消えた。目的地にたどりつくことのできなかったフライング・ダッチマン号は、幽霊船となっていまもさまよいつづけているという。
この船に出航直前、ひとりの少年がまよいこんだ。港で足をすべらせて海へ落ち、フライング・ダッチマン号に拾われたこの少年は、生まれつき口がきけなかった。彼は船のコックにネブ(Neb)と名づけられ、下働きとして朝から晩までこき使われるようになる。
その後、デンマーク最後の錨泊地で、1匹の犬がまよいこんでくる。真っ黒のラブラドールで、よごれ、やせこけていたが、ふしぎとネブの言うことをよく聞いた。船乗りたちにはないしょで、ネブはこの犬を飼いはじめる。名前はデンマークにちなみ、デン(Den)とつけた。ふたりは、傲慢な船長と野心に満ちた船乗りたちの対立におびえながらも、よりそいあって苦しい航海の日々を乗りこえていく。
だが、船はやがてホーン岬にさしかかり、難破した。嵐の海に投げだされたネブとデン。と、天使がこの罪のない少年と犬に気づいて、救いの手をさしのべる。そして不老不死の肉体と、助けを必要としている人々をたずねていき、運命を変える手伝いをするという任務を与える。
目覚めると、ネブはデンとともにフエゴ島の岸に打ちあげられていた。その瞬間、彼はおどろく。口がきける! それはまぎれもない、天使からのおくりものだった。そのうえデンとも、おたがいの思いを感じとることで意思の疎通ができるようになっていた。それまで以上に固い絆で結ばれたふたりは、かけがえのない親友として、天使に命じられたとおり、困っている人々を助けながら、世界をめぐりあるく。
2世紀半の時が流れた。いつしかベン(Ben)とネッド(Ned)と、名前を逆につづるようになった彼らは、年をとることもなく、まったく変わらぬすがたのまま、世界を放浪しつづけていた。1896年、ふたりはイギリスの田舎ののどかな村、チャペルヴェールにたどりつく。好景気にあおられ、村の事業家スミザーズは、地下の石灰岩を採掘する計画に着手。石切り場とセメント工場をつくるため、村人に立ちのきを要求している。期限は1週間後にせまっていた。
ベンとネッドは、未亡人のウィニー・ウィン夫人の家に居候することになる。ウィン一族は、代々チャペルヴェールの地主とされてきた。だがスミザーズは、土地所有権を証明する書類がないかぎり、ウィン夫人に計画を止める権限はないと言いきる。老齢ながら気骨のあるウィン夫人だが、さすがにあきらめかけていた。ベンとネッドは、なんとか村を救おうと動きだす。謎の中にかくされた手がかりをたどり、遠いむかしに失われた土地の権利書をさがしだすのだ。これが自分たちの任務だと信じ、ふたりは立ちあがった!
ジェイクスならではの力強い筆致で、ぐいぐい読ませる傑作。前半は胸おどる海洋冒険小説、後半は一転して知的な謎ときによる宝さがしと、内容ももりだくさん。少年と犬という主人公ペアも魅力たっぷりで、シリーズ第2作『海賊船の財宝』も好評を受けている。
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