おしゃべりな手紙たち
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エリザベスとタラ・スターが中学1年生になった新学期。もう何年も、新学期初日はいっしょに学校へ行っていたふたりだが、今年はちがう。タラが遠くはなれたオハイオ州に引っ越してしまったからだ。性格も好みも家庭環境も、すべてが正反対ながら、だれよりも仲よしのふたりだったのに……
エリザベスは両親と、4才の妹とくらしている。家は比較的裕福で、何不自由ない生活だが、どこか息苦しい。会社の重役で、体面を重んじる父と、専業主婦のたいくつなくらしにあき、ボランティアなどに精を出している母という、古風な家庭で育ったエリザベスは、まじめでひっこみじあんだが、思いやりがあり、がまんづよい性格だ。
いっぽう、タラ・スターの両親は、いわゆる「できちゃった結婚」。17才のときにタラが生まれたので、まだ若く、子どもっぽい。計画性がないため、いつもお金にこまっている。そんなうわついた両親をフォローするため、自然としっかりものに育ったタラ。目立ちたがりでむらっ気なところもあるが、独立心おうせいだ。
新学期初日の夜、エリザベスはタラに手紙を書く。学校でのできごと、先生やクラスメイトのようす、そしてなにより、「どうしてわたしを置いて引っ越しなんてしちゃったの???!!!」タラもすぐに返事を書く。「あたしだって、はなれたくなかったよ〜!!!!!」それにタラは、新しい学校になかなかとけこめず、ホームシックになりかけていた。心細さをまぎらわすかのように、タラは転校先のようすをおもしろおかしく書き送る。
ふたりは2、3日おきに手紙をやりとりするようになる。長距離電話はかけられない。タラの家は経済的に余裕がないし、エリザベスのほうは、父がタラ一家のことをよく思っていないからだ。仮にかけられても、ゆっくり話すなんてむり。だが手紙でなら、いくらでも、どんなことでもおしゃべりできる。
やがてタラはすこしずつ新しい学校になじんでいく。劇で役を得たのも、タラにとってはうれしいニュースだった。毎日けいこで充実していることをエリザベスに知らせると、エリザベスもよろこんでくれた。
だがそのころ、エリザベスの家庭はぎくしゃくしはじめていた。父が深夜まで家へ帰ってこないのだ。母もいらいらしており、エリザベスは両親が離婚するのではないかと不安をいだく。だがまもなく事情があきらかになる。父がリストラにあったのだ。茫然自失の父は、職さがしもせず、酒におぼれる。父の収入がなくなっては、これまでのような生活はとうてい不可能だ。家もうしなうかもしれない。エリザベスも母も、とほうにくれる。
タラは手紙で必死にはげまそうとするが、その独断的な口調は、逆につかれきったエリザベスの神経をさかなでしてしまう。「すこしは相手の気持ちも考えてよ」それを読んだタラも腹を立て、けっきょく、ふたりは手紙で絶交してしまう……。
この年ごろの女の子ならではの微妙な心のゆれ、友情の強いきずな、日常のあれこれなどが、リアルにえがきだされている。ふたりの性格がみごとにあらわれた、いきいきとした文体も魅力的だ。すべての女の子と元女の子たちにささげる、笑いと涙の物語。
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