本年度アガサ・クリスティー賞優秀賞に輝いた、春坂咲月さんの『花を追え――仕立屋・琥珀と着物の迷宮』が発売しました。

選考委員の東直己さんいわく「機知にとんだ短篇集で、この作品が読んでいて、一番純粋に楽しむことができた。この著者は、不思議なサービス精神旺盛な方なのだろう、もっとも好感を持った。惜しくも大賞受賞とはならなかったが、匹敵する底力を秘めている」と選評された力作です（註：出版に際して応募時の連作短篇集から長篇に改稿しました）。

　物語は、仙台の夏の夕暮から始まります。篠笛教室に通う着物嫌いの女子高生・八重は、ふとしたきっかけで、着流し姿の美青年・宝紀琥珀と出会います。そして仕立屋という職業柄かやたらと着物知識が豊富な琥珀とともに、着物にまつわる様々な謎に挑むことに。ドロボウになる祝着や、端切れのシュシュの呪い、そして幻の古裂「辻が花」……やがて浮かぶ琥珀の過去と、徐々に近づく二人の距離は果たして――?

謎のイケメン仕立屋・琥珀と女子高生・八重の、着物をめぐる和ミステリの登場です。イケメン着物男子と鮮やかな着物トリビアにウットリしつつ、篠笛教室の個性あふれるシニアたちや琥珀の友人・サの字といった脇を固めるキャラクターたちの丁丁発止のやりとりにニヤリとし、琥珀と八重のヤキモキするカンケイに心ときめいてください。